内定者教育が重要になってきている理由として、薄上二郎教授は@内定時期の早期化に伴い、長期にわたる内定期間中、学生をフォローする必要がある、A入社時までに新卒採用者の意識や基本的スキルを平準化する必要がある、B配属先の負担が増加しないように、入社時までに新卒採用者のスキルアップが必要だからといった3点を述べています。(『企業と人材』2006.10.20)
AとBについては新入社員研修の重要性が増していることにも当てはまることです。近年スリム化が進み、少数精鋭化体制で業務を遂行している職場では時間をかけて新入社員を育成する余裕はなく、戦力化されていない新入社員の受入れは負担の増加につながります。
そういった職場に新入社員を配属することは、新入社員を指導せず放置される可能性があり、業務習得の遅れや孤独感より早期退職につながりかねません。
よって、配属までに、実際の業務を遂行するために必要な意識やスキルを内定者教育、新入社員研修期間中に身につけさせ、実際の業務にできるだけスムーズに移行できるようにしなければなりません。
特に近年、若年者の常識のなさ、コミュニケーション能力の低下が注目されており、内定者教育、新入社員研修の重要性が益々高まっています。
上述の通り、内定者教育、新入社員研修の重要性が高まる中、では、具体的にどのような内容(カリキュラム及びプログラム)にするのが望ましいのでしょうか。
企業が属している業界、人事戦略、また学歴などにより詳細は異なるでしょうが、ビジネスマンにとって必要とされるものについては特に大きな違いはありません。よって従来の内定者教育、新入社員研修の内容(カリキュラム及びプログラム)に対しては、近年の新入社員に関する調査結果をいくつか参考にし、企業、職場側のニーズと受講生側(内定者、新入社員)のニーズを踏まえた上で内容を検討することにします。
経済産業省が平成19年3月に発表した「企業の『求める人材像』と社会人基礎力の関係」によると、企業が強く求めている能力であるにも関わらず、若手社員に不足が目立つ能力は、企業規模を問わず、「主体性(物事に進んで取り組む力)」、「課題発見力(現状を分析し目的や課題を明らかにする力)」となっています。また、東証一部上場企業においては、「働きかけ力(他人に働きかけ巻き込む力)」、「創造力(新しい価値を生み出す力)」についても不足が見られるとあります。
また、三菱総合研究所、gooリサーチが平成18年5月17日に発表した「ビジネスパーソンの新入社員に対する期待感」では、「@就社意識より就業意識」についての回答は、新入社員に対しては就社意識より就業意識を持っていることを望む意向が6割以上で多数を占めています。
「A能力面、精神面、対人面、性格面で期待すること」については、能力面で「コミュニケーション能力」(31.9%)に対する期待が最も多く、「実行力・行動力」(21.7%)「基礎知識・基礎能力」(17.1%)と続いています。 企業規模別に能力面で期待することを見ると、大企業では「コミュニケーション能力」への期待が高く、中小企業では「専門的知識、技術力」への期待が高くなっています。
精神面では「向上心」(41.4%)が最も多く、次いで「適応力」(24.0%)、「忍耐力」(19.4%)と続いています。対人面では「基本的な対人マナーにのっとった行動」(42.5%)が最も多く、その次に「協調性」(37.5%)となっており、性格面では「誠実」(34.0%)、「素直」(33.8%)、「社交的」(12.9%)の順となっています。以上の結果から、技術や知識、独創性や論理性などより、まずは職場で協調性を持って仕事に取り組む能力があり、加えて向上心を持ち成長していくことに期待がこめられていることが見て取れます。
前者の「企業の『求める人材像』と社会人基礎力の関係」は回答が企業担当者、調査対象が若手社員であるのに対し、後者は一般ビジネスマンが回答し、調査対象が新入社員に絞っていたこともあり、結果に若干の違いはありますが、今、企業が新入社員に求めるのは「主体性、向上心、行動力」「コミュニケーション能力」「基本的なマナーの習得」などといった項目だと言えるでしょう。
次は新入社員に対して行った調査をみると、リクルートが実施した「2007年度新入社員意識調査」では、「あなたが仕事をする上で不安に思っていることは何ですか?(あてはまるものすべて選択)」の質問に対する回答は、前年同様、「仕事についていけるかどうか」「上司や同僚など職場の人間関係」の二つが抜きんでています。成長にかかわる、「自分が成長できるかどうか」「やりたい仕事に就けるかどうか」はその後に続いています。