また、共立総合研究所が行った2007年度「新入社員の意識調査」で、「入社にあたって不安に思うことは何ですか(3つまで選択)」と尋ねたところ、1 位は「上司・先輩との人間関係」(回答率59.8%)、2 位は僅差で「業界知識・業務内容」(58.9%)となっており、調査開始以来、この2 項目の高回答率は続いているとのことです。
こうしたことからも、新入社員が職場に配属され、業務を行う上で不安に感じていることは「業務をうまく遂行できるか」「職場での人間関係」等であることが窺えます。
上記の結果から、企業側と受講生側のニーズを適合させた内定者教育、新入社員研修の内容(カリキュラム及びプログラム)にするには「向上心を持って主体性のある行動をする」「コミュニケーション能力を身につける」「基本的なビジネスマナーを習得する」といった項目を中心に構成するとよいでしょう。
しかし、問題は、早期戦力化するために「向上心、主体性、行動力」「コミュニケーション能力」「基本的なビジネスマナー」をどうやって習得させるかです。
「向上心、主体性、行動力」「コミュニケーション能力」「基本的なビジネスマナー」といった内容は以前からニーズとして存在し、特に目新しくはないのですが、これらをいかに効果的に指導するかが重要なポイントになります。
また、近年、若年者のコミュニケーション能力の低下、常識(マナー)についての無知が問題視されていますので、より効果的、効率的な指導が求められます。
従来では、新入社員研修期間中の2〜3日間程度で、「向上心、主体性、行動力」「コミュニケーション能力」「基本的なビジネスマナー」のポイントだけを集中的に教育し、後は配属後における職場での実践訓練で習得させるという流れだったのが、現場の少数精鋭化体制による指導時間減少及び早期戦力化の必要性と若年者のコミュニケーション能力の低下、常識(マナー)についての無知という状況と相まって、いかに指導育成するかが重要になっています。
では、どのようにして早期戦力化を図るための効果的な内定者教育、新入社員研修を実施すればよいのでしょうか。
まずは、内定者教育、新入社員研修のプログラム及びカリキュラムを検討する上で、新入社員研修を受講する新入社員についての特徴を考慮しなければなりません。
新入社員研修を受講する新入社員は全体的に研修受講に対して非常に前向きでモチベーションが高く、指導してもらった内容をしっかり習得しようという姿勢で研修を受講していることが多いです。
一方、募集制ではない、業務上強制的な研修の場合だと、他の階層では仕方なく受身で受講する人が多いのが一般的で、新入社員研修を受講する新入社員とは大きくかけ離れています。
ところが、近年は売り手市場、大量採用のため、新入社員の意識が問題になっており、違った形でモチベーションを向上させる施策が必要かと思われます。
また、新入社員は業務の経験がほとんどありません。学生時代にアルバイト経験などがあれば、業務に役立つ経験が少しはあるかもしれませんが、基本的に業務の経験がないと見てよいでしょう。
これらの点が業務の経験を積んだ他階層の受講生と受講生との学習の異なる部分です。効果的な研修で述べている通り、企業人の学習の特徴として、企業人は学んだことを自分の経験に関連させて学習しますが、新入社員の場合は業務の経験がないため、例えば「主体性を持った行動」といった抽象的なことを学んだとしても業務にどう活かすか、具体的にイメージできないため、効果的に習得することができません。ロールプレイングなどで体験することでイメージ化が可能になりますが、新入社員研修時では時間に制約があります。
こういった新入社員の特徴を考慮して、新入社員の早期戦力化を実現するには、内定者教育と新入社員研修を関連させた連動性のあるプログラムが効果的であると当委員会は提言します。
内定者教育については、「企業人の基本」をテーマに通信教育、eラーニングを実施している企業もありますがその学習内容を新入社員研修に連動して活かしている企業は少ないのではないでしょうか。集合研修型の新入社員研修では内定者教育における通信教育、eラーニングの学習内容の理解に関係なく、もう一度同じ内容を学習するといった企業が多く見受けられます。
新入社員の早期戦力化を図るには内定者教育を単に内定者のフォローに留めるのではなく、新入社員研修と連動させた企業人としての準備期間として有効に活用すべきだと思います。
もちろん、まだ組織の一員ではなく、また卒業論文などの取り組みなどがありますので、ハードな内容を課すことはできません。しかし、現在実施している通信教育、eラーニングなどと同様の負荷で十分対応できます。
当委員会が提言する内定者教育と新入社員研修を連動させたプログラムは「社会人の品格」をテーマに新入社員の早期戦力化を目指しております。
具体的には、内定者教育において通信教育もしくはeラーニングで「企業人の基本(社会人への心構え、人間関係とコミュニケーション、ビジネスマナー等)」を学習します。
また、抽象的な学習で終わらせないために、同時に学習効果を高めるためにも「数多くのビジネスにおけるケーススタディを解く」ことによりあるべき姿勢、行動とはどのようなことなのかをイメージできるようにします。
ビジネスにおけるケーススタディとは、実際に新入社員が職場に配属された時に起こりうる状況を問題にしたものです。本質的なものの見方や考え方を訓練することに狙いをおいた研修技法の一つで、「事例研究法」ともいいます。
具体的には「出勤途中に事故で電車が遅れている場合、どのように対処すればよいか」「朝急用ができ、出勤が30分ほど遅れそうになることを直属の上役の山田係長に電話で連絡しようとしたが、山田係長は不在である。この場合、遅刻することを誰に伝えるのがよいか」といった内容です。
このようなケーススタディを数多く解き、提示された事例について考察することによって、類似の問題や状況における問題の解決に対する応用力を養成することができます。
このように内定者教育の段階では、「企業人としての基本」を抽象的に学習するのではなく、ケーススタディを通じて、できるだけ職場で業務を遂行している姿をイメージ化できるようにします。
先述した新入社員が入社時に抱えている不安「業務をうまく遂行できるか」「職場での人間関係」は、全く未知の世界に飛び込むことから生じるものです。職場で業務を遂行している姿をイメージ化できればそうした不安は解消できるはずです。
また、企業側が感じている「主体性、向上心、行動力」「コミュニケーション能力」「基本的なビジネスマナー」の物足りなさについても、その行動を裏づけする具体的なコミュニケーションの方法、基本的なマナーの知識、または向上心を持った主体性のある行動自体がどういったことかについて新入社員自身が理解できていないということが原因の一つにあると思われます。
そこで、新入社員研修では、「企業人としての基本」のベースを学習しているということを前提に、内容をできるだけ短い時間で再確認し、それ以外の時間を挨拶、お辞儀、電話応対、接客応対、名刺交換といったことロールプレイングにあて、学習したことを実践できるように徹底的にトレーニングします。
内定者教育にて「企業人の基本姿勢、行動」を抽象的な学習だけではなく、ケーススタディを通じて、実際業務のイメージ化を図り、新入社員研修で学習する内容の活用方法がイメージ化できているので効率的にロールプレイングを中心とした研修を行うことができ、かつ効果的に研修内容を習得できるようになります。